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経済合理性で考えるイノベーションとは 濱口秀司氏との対談 - 日経クロストレンド

書籍『イノベーションを生むワークショップの教科書』(日経BP刊)の出版記念イベントが2021年7月に開催され、著者の一般社団法人日本社会イノベーションセンター(JSIC)代表理事の堀井秀之氏が、USBフラッシュメモリーのコンセプト開発などで知られる著名なイノベータ―の濱口秀司氏と対談した。同書籍はJSICの教育プログラム「i.school」のアイデア創出ワークショップに関する知見を掲載している。クリエイターの発想に頼らない、両者が語るアイデア創出法とは何か。

(左から)堀井秀之氏と濱口秀司氏 (写真/安部俊太郎)

(左から)堀井秀之氏と濱口秀司氏 (写真/安部俊太郎)

『イノベーションを生むワークショップの教科書』(日経BP刊)

『イノベーションを生むワークショップの教科書』(日経BP刊)

 JSICが運営する教育プログラムのi.schoolでは、ワークショップと呼ぶグループワークによりアイデアを創出する活動を実施している。最大の特長は、創造性に関する学術的知見に基づいてワークショップのプロセスを設計している点。クリエイターなど個人の感覚に頼るのではなく、ロジカルに進めるため、多くのビジネスパーソンからは「i.school のワークショップは理解しやすい」と評価されている。

 書籍『イノベーションを生むワークショップの教科書』(日経BP刊)では、i.school 流のワークショップの運営方法を記述しており、本連載では書籍の内容の一部を抜粋して紹介していく。どうすれば優れたアイデアを出せるかが、ロジカルに理解できるはずだ。連載1回目は、多くのイノベーションを起こしてきた濱口秀司氏との出版記念イベントの対談を掲載する。

堀井秀之(以下、堀井) i.schoolを始めて11年たち、最近10年間の成果を書籍『イノベーションを生むワークショップの教科書』にまとめました。濱口さんには、2010年から毎年 i.schoolにお付き合いいただき、多くのことを学ばせていただきました。

 濱口さんと i.schoolのやり方の共通点と相違点を考えてみると、明らかな違いは濱口さんのやり方は、実際に数々のイノベーションを起こしてきたという実績に基づいていることです。共通点は、濱口さんが日本人の特性と論文集(「SHIFT イノベーションの作法」ダイヤモンド社)に書かれている通り、「道を究める」という姿勢にあると思います。i.schoolも理想的なイノベーション教育を追求して来ました。

濱口秀司(以下、濱口) 私がやっていることはゲリラ戦のようなもので、グループ戦というよりほぼ1人でやっています。ただ普通のゲリラ戦と違うのは、手法に基づいた「手法系ゲリラ戦」という点です。

 i.schoolは学校なので、アカデミックな側面としてゲリラ戦もグループ戦も、いろいろなやり方を研究し、教えています。i.school初期の頃に私が感銘を受けたのは、「イノベーションを起こすのではなくて、イノベーションを起こすためのプロセスを設計できる人を輩出したい」という方針です。その方針は正しいと思いました。私も「手法系」なので、思想の近さを感じ、共感しています。

 ハーバードビジネススクールに行くと素晴らしい経営者になるのかというと必ずしもそうではない。しかし、そこに行くと経営のいろんな視点を学んで、こうやって経営すればいいのだということが分かり、ケーススタディーがあるから、実戦には行かなくても練習することができ、仲間がいて、アルムナイ(企業の離職者やOB・OGの集まりなど)といった人間的なつながりがあって、明らかに正しい経営ができる確率が高まっている。学校というのはそういうものです。

堀井 i.schoolのKPI(重要業績評価指標)は10年後、20年後に日本を変えた100人、世界を変えた100人がリストアップされたときに i.schoolの修了生がどのくらい入ってくれているのかということです。

 i.schoolの修了生が、i.schoolの修了生の中から12人を選んでインタビューを行い、今どのような活動をしているかを「解答のない参考書」という本にまとめてくれました。大学の新入生に読んでもらい、大学生活の過ごし方や将来のことを考えてもらいたいという思いが詰まった本です。何年か前に雑誌『AERA』の編集部の方が i.schoolに来られて、一緒に何かやりたいとのご依頼を頂きました。どうして i.schoolとなのですかとお伺いすると、若手で輝いている方々にインタビューをすると多くの方が i.schoolの修了生だったから、とのことでした。まさしくこれが i.schoolの目指しているところです。

濱口 それは全く同感で、そのKPIはいいと思います。i.schoolは学生だけでなく、社会人の方が参加しておられますが、これは結構重要だと思います。例えばアメリカのMBA(経営学修士)も、いったん社会人になってから自分でお金をためてもう一度大学に入る元社会人の学生がいっぱいいます。i.schoolも今後は社会人が学生と同じようにもう一度入学するようなことを目指してはどうでしょう。社会人応募というのはありますか。

堀井 社会人を対象に「JSIC School」というファシリテーター養成プログラムを行っています。i.school流のワークショップを設計し、ファシリテーションするスキルを学ぶことができます。

濱口 それはすごく良いことで、理想は学生も社会人も関係なく一緒にやることだと思います。学生に教えるのは非常に難しい。何が難しいかというと、社会経験がないから課題を出すにしてもビジネスの課題ではなく、自分たちに関わりのあることか社会的課題にせざるを得ません。社会人が入ってくるとビジネスの問題解決を教えやすくなると思います。

 実際に何か作っていこうとしても、1人では作れない。だから、組織の中でどうやって前に進めるかというテクニックや考え方はすごく重要で、知識として製造や販売や財務などすべて理解していないといけないし、どうやって巻き込んで、どうやって前に進めていくのかも学ばなければなりません。

(写真/安部俊太郎)

(写真/安部俊太郎)

イノベーションは「SHIFT」か「JUMP」か

堀井 濱口さんは従来の事業領域やメンバーで新たな商品・サービスを提供することを「SHIFT」と呼んでいます。ターゲットを絞っており、今までにない新規事業など、いわゆる「JUMP」といった領域は対象としておられません。i.schoolは「JUMP」を対象としており、ここも濱口流とi.school流の違いなのではないかと思います。最近、日本の企業も「JUMP」の必要性を感じておられるように思われますが。

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