世界的なパンデミックによって延期や中止を余儀なくされたファッションウィークだが、代わりに多くのメゾンがこれまでとは異なる新しい発表方法に挑戦している。
長い歴史と名声を誇るオートクチュールコレクションも例外ではない。ソーシャルディスタンスについての規則や、渡航の制限を受け、パリ・ファッションウィークを主宰するオートクチュール&モード連盟(FHCM)は、7月の6日から8日にかけて開催される2020-21年秋冬コレクションを、デジタル、あるいはフィジタル(フィジカル+デジタル)形式で開催することを決定した。
1945年以来、オートクチュールコレクションはパリ・クチュール組合(シャンブル・サンディカル)が運営を担い、シャネル(CHANEL)やディオール(DIOR)、ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)、ジバンシィ(GIVENCHY)、スキャパレリ(SCHIAPARELLI)などの超一流メゾンが夢のようなショーを開催してきた。「クチュール」として認定されるためには、各メゾンは一着一着をオーダーメイドでつくり上げる必要があり、職人の手仕事にかけるべき時間など厳しい規定があるほか、プレタポルテをはるかにしのぐレベルの創造性と繊細なディテールが要求される。
ディオールの春夏クチュールコレクションより。Photo: VogueRunway.com
1998年春夏のディオールや2015年秋冬のシャネルなど、これまでクチュールコレクションでは、ファッション史に刻まれる芸術的な作品が生まれてきた。前者はパリの歴史的ランドマーク、ガルニエ宮(オペラ座)を会場に、デザイナーのジョン・ガリアーノによるため息の出るようなプレゼンテーションで観客を魅了した。また後者では、カール・ラガーフェルド発案による、カジノを再現した華麗なステージセットが話題をさらった。
今回のコレクションに参加する各メゾンは、通常のショーを開催する代わりに、ビジュアルのみで作品を発表することになり、一部のメゾンではすでにその一部を先行公開している。ファッション界でも最も伝統を重んじる分野と思われてきたクチュールとしては、まさに画期的な措置と言えるだろう。
なかでもヴァレンティノ(VALENTINO)は巨匠フォトグラファー、ニック・ナイト(トリッピーな映像が話題を呼んだカニエ・ウェストのIMAX映画『ジーザス・イズ・キング』の監督も務めた)とタッグを組み、仮想現実(VR)形式で新作を披露する予定だ。舞台となったローマの映画撮影所チネチッタを訪れたかのような、臨場感あふれる映像を体験できるだろう。ショーのライブ配信は7月21日に予定されているが、プレビューはFHCMのサイトで7月8日から視聴できる。
こうして新しい試みに挑戦するメゾンがある一方で、参加を見合わせたブランドもある。とりわけ残念なのは、高い期待が寄せられていたサカイ(SACAI)のデザイナー阿部千登勢が手がけるジャンポール・ゴルチエのクチュールコレクションが開催されないことだ(ゴルチエでは、ゲストデザイナーによるコレクションのシリーズ化を計画していて、阿部はその第1弾となる予定だった)。バレンシアガ(BALENCIAGA)のクチュールコレクション・デビューもおあずけとなったほか、ジバンシィでは、新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したマシュー・ウィリアムズが、自らのヴィジョンを初披露する機会が持ち越しとなった。
オートクチュールは、詩的でシアトリカルな別世界を提案する場だ。その華麗なるファンタジーの世界を、今回は家に居ながらにしてフロントロウで体験できる。ぜひ、このリンクから覗いてみよう。
Text: Alex Kessler
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July 06, 2020 at 08:08AM
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オートクチュールもヴァーチャルに。最新2020-21年秋冬コレクションはこう見るべき! - VOGUE JAPAN
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